【全体公開】SS 恋愛偏差値ゼロな彼女③
🕑 Added 2025-09-12 05:42:42 +0000 UTC「集中できない」
ページをめくる音ばかりが部屋に落ちている。
文字はきちんと並んでいるのに、意味が脳に入ってこない。
禁欲期間を決めたのは私だ。
その方が合理的だと思った。
このままじゃお互いに退屈して関係が崩れる――そう計算した結果。
……だったはずなのに。
ペンを持つ手が止まるたび、
ノートじゃなくあの時の光景がふっと浮かぶ。
彼の顔。息の速さ。
「……どうして今そんなことを」
自分に問いかけても答えは出ない。
勉強に集中したい。
でも頭のどこかでずっと別の音が鳴ってる。
あの日のことを思い出してる自分が、嫌になる。
もうあんなふうにはならないって決めたのに。
決めたのに――。
理性を守るための禁欲が、
逆に理性を揺らしてるなんて皮肉すぎる。
ページの端を指でなぞっていた。
細い線が何本も引かれたノート。
その文字列のどれもが今は意味を持たない。
ペンを置いた瞬間胸の奥で何かが外れる音がした気がした。
視線が紙から離れ部屋の隅にぼやけた影を見ている。
……影じゃない。
頭の中に浮かんでいるのは彼の輪郭。
「……やだな」
声に出すとほんの少しだけ楽になるかと思った。
でも逆だった。
耳に残ったその声がかえって火をつける。
その瞬間、ノートに戻れなくなった。
手が股間の上で止まる。
動かす理由なんて本当はない。
けれど止めている理由ももうなかった。
一度、深呼吸をする。
止められる最後のチャンスを自分で潰した。
「……ちょっとだけ、ね」
部屋は静かだった。
なのに空気がやけに騒がしい。
カーテンの隙間から入る光が机の端で揺れるたび、
視界の奥が滲む。
「……ふぅ……」
呼吸が浅い。
さっきまでノートを見ていたときとはまるで違う速さで。
体温が上がっていくのが自分でもはっきりわかる。
耳の奥で、自分の鼓動が不自然なくらい響いている。
ページをめくる音よりも大きくて早い。
目を閉じると映像が勝手に流れ始めた。
あの日の記憶。
彼の声視線名前を呼ばれた瞬間――
全部排除したはずのものが、
一気に頭の奥に流れ込んでくる。
「……だめ集中するって決めたのに……」
声が震えて自分でも驚いた。
なのにその震えが逆に意識をそらせない。
どうしようもなく求めてしまう感覚が、
もう止まらないと悟った。
しばらくして、
机の上に置いたスマホが、ぼやけて見えた。
画面に映る時刻は数分しか経っていないのに、
やけに長く感じた。
「……最悪」
吐き出した言葉は短かったけれど、
その奥にある感情は、言葉にしきれないくらい重かった。
罪悪感というより――
『また負けた』という事実が胸を締めつける。
それでも、スマホを手に取ってしまう。
無意識に裏アカを開いて投稿フォームに指を走らせていた。
SNS投稿
理性ってどこまで信用できるんだろう。
勉強に集中できなかった。
結局いちばん弱いのは、私自身
送信ボタンを押す指先が震えたのは、
まだ体温が下がりきっていなかったせいかもしれない。
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Comments
secret dmain
陰毛と性欲が結びつけられるかは分からないけど真面目な子でもしっかり性欲があるというギャップが好き
Misternpc
陰毛が多く性欲が強いと言う人がいるのも不思議ではない。とんでもない女の子だね
secret dmain
まさに「芽吹き」の不安定さや戸惑いが、山本さんの拗らせという形で滲み出ているのかもしれません。 未完成なまま揺れる心の輪郭って、どこか放っておけない魅力がありますよね。
secret dmain
なんだか時間差で効いてくる魅力ってありますよね…… きっとその方も、山本さんのように“気づかれにくい毒”を持っていたのかもしれません。
セージ
拗らせている感が、思春期って感じでいいですね。萌芽っていう感じで萌える。
Okaimonoth
近所に住んでいたり、同じ大学に行ったりした知人が今思うと山本さんっぽい感じだったのをふと思い出しましたが、当時は魅力に気が付きませんでした……
secret dmain
楽しんで頂けて何よりです!
otiak
今回も大変美味しくいただきました! ありがとうございます!