皮に包まれメイド喫茶で働くことになった少年の話 2
🕑 Added 2021-03-05 05:51:18 +0000 UTC
倉庫を後にし、俺が着る予定の皮を持って事務所へと戻ってきた。契約書を作成するのでしばらく待ってほしいと言われ、今は振舞われたコーヒーを飲んでいる。メイドがつく言え喫茶店なのだから……いやメイド喫茶だからこそこのコーヒーだって一杯でもそれなりの値段がするはずだ。
ごちそうするって言われてるんだから後から代金取られたり、バイト代から引かれたりってことはない……よな?
「お待たせしました。それではこちらが雇用契約書となります。」
「あ、はい。」
細かな文字がびっしりと書かれた紙が広げられた。今の時間でこれだけの書類を作ったのか? いや、基本の書式があってちょっと修正しただけだよな。
「先ほどお話しました割り増し後の時給がここに、先払いとして10万円をお渡しする旨がここに書かれています。それからうちで働いて頂くにあたっては専用の皮を着用して頂くこともここに盛り込んであります。確認してくださいね。」
契約書というだけあって色々と面倒な言い回しで書かれている。けど、指を差して説明された箇所には確かに言われた通りの内容だ。
「えっと、これって名前を書くだけでいいんですか?」
「いえ、記名だけではなくハンコを……って、学校帰りですし持っていませんよね。拇印でも構いませんが、お願いできますか。」
当然だけれどハンコなんて持ち歩いているはずがない。手が汚れるけど仕方ないな。
「はい、これでOKです。ではここからは面接に来たバイト志望者ではなく、正式なアルバイトとして扱いますね。そちらも私のことは店長、と呼んでください。」
そう言えば聞いてなかったけど、この人って店長さんだったのか。
「分かりました、よろしくお願いします。店長さん。」
「はい、よろしくお願いします。それでは先ほどのお約束通り今日から働いて頂きますね。まずは準備をしましょうか。」
基本的に学校が終わってからこの店が閉店する8時まではウェイトレスとして、その後は片付けを終えるまで働いて終了らしい。確かにこれじゃどうやったって目標金額の達成は無理だったな。
「では着替えて貰いますけれど、1人で大丈夫ですか? 分からなさそうだったら一緒に見ますけれど。」
「その着替えって、この皮を着るってことですよね? 一応、着かただけ教えて貰えますか?」
一番気になるのは、この皮を着る時に裸にならなきゃならないかってことだ。ぱっと見だと薄いし、トランクスを穿いてたら皮越しにもわかっちゃいそうなんだよな。
いや、そう考えるとまっぱで着た場合も股間の膨らみが見えることになっちまうか?
「そうですね。まず皮を着る前には衣服を全て脱いでください。」
……やっぱりか。って、この人は裸になるのに一緒に見るって言ってたのか?
「見ての通り、背中が切れ目が入っていますよね。ここを拡げて身体を入れて下さい。最初に足を入れてから潜り込むように頭と腕を入れるようにすると着やすいですかね。」
「分かりました。じゃあまずは一人でやってみます。」
流石に女性の前で真っ裸にはなるってのには抵抗がある。
「あ、それと気を付けて頂きたいのはですね。」
「はい?」
他にも何かあるのか?
「先ほども言いました通り、こちらの皮はアナタより大きいですよね。普通に着たら手足の先が余ってしまいます。その際に、無理やり奥まで手足を押し込まないで欲しいんです。」
「えっと、すみません。どういうことでしょう。」
「例えばアナタの指先が皮の手首までしか届かなかったとします。その場合でもアナタの手は皮の手首までで止めておいてください。足もそうです。後から補正を掛けますから余った部分はそのまま垂らしておいてください。」
つまり萌え袖みたいにしておけってことね。
「分かりました。後はこの皮、背中の切れ目にチャックとかはついてませんよね。どうやって閉めればいいんですか?」
「」
「それは身体を入れたところで呼んで頂ければ補正と一緒にこちらで処理しますよ。他に気になることはありますか?」
服を脱いでコレを着る。手足は余らせて背中は開いたままでいい。多分、大丈夫……あ、いや。
「すみません。荷物とか脱いだ服とかってどうすればいいでしょう。」
「そうですね。言い忘れてました。更衣室にはロッカーがありますのでそこを使って貰います。未使用のロッカーは……6番が開いてますね。6と書かれたロッカーを使ってください。鍵はお渡ししておきますけど、取り合えず先に着替えて貰って後からロッカーに入れるのでもいいですよ。」
机から取り出した、⑥と書かれたシールの貼られた鍵を渡される。
「じゃあ更衣室に案内しますね。あ、途中でトイレも案内しますので先に用を足しておいてください。一度着てしまうと途中でトイレってわけにもいきませんし。」
「分かりました。」
メイド服を脱いで、皮も脱いで、今の服に着替えてからトイレに行く。トイレの後にはまた皮を着ることころから、なんてことをしてたらかなりの時間を無駄にしちゃうもんな。
「はい、ここが更衣室です。じゃあコレ、皮とロッカーのカギをお渡ししておきますね。」
「あ、ありがとうございます。」
いかん、店長に運ばせちゃったな。トイレから出た時にすぐ受け取ればよかったか。でも自分の荷物もあるしなぁ。まあいいか。今更どうしようもないし。
更衣室はあまり広くはないけれど壁一面にずらっとロッカーが並べられ、中央に背もたれのない長椅子が置かれている。
「じゃあ私は外に居ますので着替え終えたら声をかけて頂けますか?」
「あ、はい。」
あまり待たせるのも申し訳ないし、とっとと着替えてしまわないとな。
ひとまずは6番のロッカーを探す。と言っても端からナンバーが打たれていたのですぐに見つかった。先に荷物を、そして脱いだ服を順番にロッカーへと放り込む。
「さて。」
改めて皮を広げてみる。本当に美女から中身を抜き取って空っぽにしてみました、と言うのがピッタリな代物だ。作り物だと分かっていても人の肌を触っているみたいな気分になる。
背中の切れ目から見える中はピンク色をしていて、何だか湿っているようにも見える。外側が人の肌ならこっちは人の内側、か。口の中なんかをイメージさせる色合いだ。
何となくこの中に入るってのは皮に食べられるんじゃないかって思えてしまう。
いや、バカらしいな。とっとと着てしまおう。まずは足からだな。背中の切れ目を出来るだけ広げて右足から……
「んっ……」
やっぱり濡れてる? 着やすくするために何か塗って滑りやすくしてあるのかな? 冷たくて思わず変な声が出ちまった。
ただ冷たかったのはほんの一瞬だった。すぐに温かくなったからOK。足はやっぱり途中までしか届かないけど、余らせておいていいって話だから次だ。
皮には思ったよりも延びるみたいだから上半身は一気に行こう。水中を掻き分けるようにして、頭と手を同時に皮へと潜り込ませる。
そう言えば聞かなかったけど呼吸とか視界ってどうなってるんだろう。目や口には穴開いてなかったような気がする。
「すぅ……はぁ……」
あ。ちゃんと呼吸できる。じゃあ穴が開いてないわけじゃないのか。って、当たり前だな。皮を着たら窒息するんじゃ誰も働けなくなるわけだし。
柔らかい身体部分と違って、顔は崩れないためなのか結構しっかりと作られてる。おかげで口を大きく広げることが出来ないし、これじゃちゃんと喋れなさそうだな。息が出来るのは小さな穴が沢山開いてるとか、唇の間にすき間が出来てるとか。そんな感じかな?
目もちゃんと見えている。外からは見た時には視線が通るとは思えなかったんだけど、マジックミラーみたいに片側からは見えるけど逆からは見えないって仕掛けなのかな?
取り合えず着ることは出来たけど……やっぱり大きいよな。足の先は皮の足首くらいにまでしか届かなかったし、手も指先は皮の手首くらいだ。それとすっげえスタイルがいい。着る前はあまり気にせず単に背が高いって程度の認識だった。けど着てみてはっきりと分かった。胴体、肩からお尻にかけてはほとんど俺と同じ位だ。
じゃあなんでこんなに皮が大きいかと言えば、手足だけがスラっとしていて凄く長い。
この皮、ぴったり身体に合う人なんているのか? いや、俺が胴長短足だなんてことじゃないよな。……ないよな? まあいい。これ以上は自分じゃどうしようもないんだから後はやって貰おう。
「んん~。」
って、喋れないんだった。どうしたもんかな。
「はい、じゃあ後はこちらで請け負いますね。」
うわ、ビックリした。確かに声をかけたけど、いつの間にこんな近くに着てたんだ? 今って扉が開いたっけ?
「それではですね。まずはこちらの長椅子に座って手足を伸ばしておいて下さい。皮が折れ曲がってると補正が上手くいきませんからね。」
そういうものなのか。ていうか補正って何をどうするんだろうな。取り合えず椅子に座って足を延ばす。余った部分はそのまま前へと伸びている。手は膝の上。とは言えこっちも肘を曲げずに伸ばしたままだ。
「その前に。このままじゃ喋れませんね。ちょっとだけ待ってください。」
「んんっ……あれ? 喋れる?」
正面にかがんだ店長が両方の頬を撫でたと思ったら不思議と口が開くようになっていた。あれ? でも口を覆っていた皮の感覚もなくなった様な……