銀麗の魔剣と新米冒険者 後編
🕑 Added 2022-09-03 08:59:41 +0000 UTC
ダンジョンB45F
「なんか順調に進みすぎてて怖いわねー……お宝いっぱいだし、敵も出てこなくなったし」
「そ、そう……ですね……」
30分ほど後、アイシャ達は更なるダンジョンの深みへ足を踏み入れていた。
宝を手にして気を良くしたアイシャの足取りは軽く、ギア・ゴーレムも最初に出てきたもの以降は現れなくなっており、やや拍子抜けしつつも先に進んでいく。
時間の経過と共に口数が少なくなっていくリリカという心配な要素はあれど、あえてそれを口に出すことはせず。
それを口にしたなら、逆に気を遣わせてしまうことが火を見るよりも明らかだから。
だがそれも、2人が先に進むにつれて……時間が経つにつれて事情が変わってくる。
それはダンジョン攻略佳境も佳境。地下48階地点で起きた。
「ひぅ……っ!?」
ぶるりと大きく身体を震わせて、その場に立ち止まってしまうリリカ。
何事かとアイシャが振り向くと、そこには服の裾をぎゅっと握りしめ、前屈みで俯く様子が見えた。明らかにただ事では無い様子に思わず駆け寄る。
「り、リリカちゃんどうしたの!?すごい汗だよ!」
「い、ぇ……!なんで、も、ありませ……!」
「なんでもないわけないよ!何かあったなら言って?助けられるかもしんないから!」
「な、なんでもないんです……!ほ、ほんとに、なんでも……っ、ぁ……!」
なんでもないという言葉と裏腹に辛そうな表情を浮かべるリリカ。
なぜこうまで頑なに口を閉ざすのか。その答えを問うより早く、その全身で答え合わせがされる。
先ほどより大きく身体を震わせ、びくんと大きく背筋を逸らすと……次の瞬間、小さな呻きと共に両手を股間にあてがった。
それはどんな言葉よりも雄弁に、彼女の窮地を物語る。
「ぁ…………あっ!!ち、ちが、ちがうんです!これは、その、えと、ちょっと……その……!」
「あ……!だ、だいじょうぶだよリリカちゃん!?まあほら、人間だから!!」
「ふぁぅぅぅぅぅ…………!!」
波が引くと同時、すぐに手を離すがすでに遅く。その姿を見たアイシャを誤魔化そうと必死に言い訳しようとするが何も思い浮かばない。
そしてアイシャもようやくリリカの現状に気づき、なにか気の利いたことを言おうとするが何も思い浮かばず。
互いに気まずい空気を抱えたまま、しかしどうにかしなければならない現状を打開すべく知恵を絞る。
「しかしどうしよっか……ここから街へ帰るには遠すぎるし、先に進むってのも……帰れる保証が……」
「き、帰還魔法陣とかはないんでしょうか……」
「普通のダンジョンなら深いとこにはちょくちょくあるもんだけど、ここにはこんだけ深く潜ってもなかったからねー……」
「まあ一個も上への移動手段が無いってことはないと思うのよ、不便すぎるし。だけどどこまで行ったらそれに会えるかってのは……」
アイシャが言うのは至極真っ当な理屈。旅慣れしているが故の経験則。
先に進めば帰るための方法を見つけられる可能性はある。
通常の遺跡もここも、人が住んでいた場所である限り移動手段が無いはずはない。それは冒険者の常識であるが、しかしそれがどこにあるかがわからない。
下手をすればここからまた何十階も降りなければならないかもしれないのだ。
だからといってここから引き返すことを選べば、来た道を48階も登らなければならない。果たしてリリカの我慢はその間持つだろうか。
2人は今、旅の岐路に立っていた。
(戦果は十分。帰るのは別にいいとしても……ほんとにどうしよう。どうするのがいいのか……)
「ん……はぁっ……!」
(いや、迷ってる時間はない……!)
「行こう、リリカちゃん!」
「ふぇ……?」
もじつくリリカの手を引いて、アイシャは先へ進むことを決めた。
進むも退くも地獄なら、前へ進む。それが彼女の冒険者哲学だから。
(もしダメだったらごめんね、リリカちゃん)
ある種の悲壮な決意と共に、アイシャは先へと進んで行った。
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 もじもじ
??? ???/500
2つ名 無敵の堅盾
ひとことコメント
お、おトイレ行きたいの、ばれちゃった……!あぅ、ふあぅぅ……!
そうび
うで きのつえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
たたく かくれる
魔法
ヒール ディフェンス
必殺
ディバインリフレクター
もちもの
HPポーション×6 MPポーション×8
ATK強化薬×2 DEF強化薬×2
おいしい水×1
落ち着きのない理由がばれてしまった新人冒険者。
恥ずかしさから言うに言えなかった尿意が、とうとう隠しきれないレベルに。
その原因は言うまでもなく、たくさん飲んだMPポーションにある。
出発時点ではポーションは30本あったが、アイシャと合流した時点で20本。そして今では8本。
ディバインリフレクターは消耗が激しいためどうしてもポーション消費が嵩んでしまうのだ。
そこへアイシャの負傷を治すためのヒール連打が重なり、計22本ものポーションを飲んだ彼女のお腹はたぷたぷ状態で、これからさらに大変なことになるのは避けられない。
ちなみにポーション1本の内容量はおよそ100mlである。
ついでにこれまでの小休止に好物のりんごジュースも飲んでいる。時間との戦いである。
もう子どもじゃないから大丈夫な11歳
_________
ダンジョンB49F
「なん……なの、これ……?」
「ぎ、ギア・ゴーレムが……たくさんいます……」
「でも動いてはないみたい……どういうこと?」
ダンジョンの更なる深みへとやってきたアイシャたちを出迎えたのは、通路脇に立ち並ぶ無数のギア・ゴーレムたち。
しかしこれらは機能を停止しているのか、襲ってくる様子はない。それが逆に不気味だった。
「リリカちゃん、ちょっと離れててね」
「ど、どうするつもりですか……?」
「ブッ壊すのよ、今のうちにこいつを」
「ええっ!?う、動いてないのにですか……!?」
「確かに今は動いてないけど、後でまた動くかもしれないでしょ?そうなったら大変だからね」
そう。これは遺跡探索において極めて常識的かつ正当な行動である。
どういう原因によってギア・ゴーレムが停止したのか不明である以上、再び動く可能性を排除してはならないのだから。
もし仮にこれが罠であり、2人がこのまま進んだ後で襲われると仮定するなら、前後左右あらゆるところから攻撃を受けることになる。
罠ではなく本当に停止しているとして、それが一時的な不具合であるなら同じこと。その不具合が解消されたら襲われる。
そうなる前に破壊しながら進めば、たとえ途中で動き出したとしてもなんとか対処のしようはあるだろう。
破壊していればそもそもの頭数を減らすことができるし、そうしながら進むことで挟み撃ちのリスクを減らすことができるから。
「あっ……そ、そう、ですよね……もし動いたら大変、ですものね……」
「そういうこと。だから悪いけど……ちょっと待っててくれるかな」
しかし冒険者の鉄則と呼べるものではあるが、これには一つだけ問題があった。
普通に進むことと比べて、はるかに時間がかかってしまうことである。
それは今のリリカにとってかなり辛いことであった。
しかしそれでも、アイシャの判断が正しいことは言うまでもない。持てる情報の中で紛れもない最善を尽くしている。
そうであるなら、駆け出しの自分がそれに口を挟むことなど。
リリカはこれ以上何も言うことが出来なかった。迫り来る欲求を押し殺し、黙り込む。
「なるべく急いで壊すから……ごめんね、リリカちゃん」
アイシャもまたリリカの気持ちを理解していないわけではない。その事情を知っている今、一刻も早く帰らなければならないのは痛いほどわかる。
だがそれでも、命に代えられるものではないのだ。
冒険者として、死なないことは何より優先される。特に誰かの命を背負うのならばなおさらに。
「ってことで……とっととブチ壊れろォォォォォオォォオオオアアアアア!!!!!!!」
だからアイシャは気合を入れる。この小さく可憐な少女を守るため、物言わぬ巨人の装甲を引き剝がし、そこに魔法を流し込み無力化する。
通路にずらりと並ぶ、見える範囲だけで十数体……おそらく奥に進めばさらにたくさんいるのだろうそれを、すべて破壊するため。
アイシャの戦いが始まった。
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 もじもじ
??? ???/500
2つ名 無敵の堅盾
ひとことコメント
が、がまん……しなきゃ……!
そうび
うで きのつえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
たたく かくれる
魔法
ヒール ディフェンス
必殺
ディバインリフレクター
もちもの
HPポーション×6 MPポーション×8
ATK強化薬×2 DEF強化薬×2
おいしい水×1
ローブの裾を掴んだり脚をさすったり、忙しがない新人冒険者。
そのお腹を苛むものは時間と共に膨れ上がり、幼い身体に切ない衝動をもたらす。
冒険慣れしていないことから彼女の「容量」は常人のそれと大差ない。そこにたくさんのポーションを飲んでしまった彼女の残り時間はそれほど多くないだろう。
必死に耐える11歳
_____________
1時間後……
「ぜぇ……ぜぇ……」
「…………っ、あーーーーーーっっもう!!!!!!!コイツら硬すぎんのよぉ!!!!!」
アイシャが通路沿いのギア・ゴーレム破壊を始めてから1時間。作業は大いに難航していた。
その理由は言わずもがな。未知の金属に依る装甲があまりにも頑丈過ぎることである。
その辺の男なら圧倒するアイシャの腕力をして、その破壊は一体だけに限っても一苦労なのだ。
なにしろギア・ゴーレムの弱点といえる砲口は何もない時には当然装甲の下に仕舞われており、それ以外の箇所は魔法も何も通さない。したがって彼らを無力化するにはまずこの装甲を引き剥がす必要があるのだ。
しかし未知の技術で出来た兵器の装甲など、無抵抗とはいえ簡単に引き剥がせるものではない。
結果、1時間が経過してなお無力化できたのは5体程度に過ぎず……
そして通路にはずらりと並ぶ数十体のギア・ゴーレム。まだまだ先は長い。
「ふぅっ……ふぅっ……!」
さらにアイシャを急かすのは、時間と共に切羽詰まっていくリリカの「事情」
アイシャが破壊活動に集中しているためかその仕草もやや大胆なものになっており、今や座り込んで股間を押さえ込むようになっていた。
それを見て見ぬふりをする優しさがアイシャにも存在したが、しかしもはや猶予がないのは明らかだ。
(どうしようか……こんだけ長く居ても動き出す気配がないし、リスクはあるけど先に行く……?けどもしこれが油断させるための罠だったら……)
それだけにアイシャは迷っていた。すべてのギア・ゴーレムを破壊しようと思うとどれだけ時間がかかるかわからず、どう考えてもリリカの我慢はそこまで持たない。ならばもうリスクを承知で進むしかないのではないか、と。
しかしやはり挟み撃ちのリスクというのは無視するにはあまりにも大きすぎ、それが彼女を迷わせていた。
単独でさえあれだけ苦戦した相手と、今度は前後を挟まれた状態で戦う。それは到底無理な話なのだから。
うんうん唸りながら考えていると、突然通路が明るく照らし出された。
地下なのにまるで昼のような、天井から太陽のように明るい光が降り注ぐ。
それは彼女らが持つ探索用のカンテラとは比較にならない光。
(これは、ボスのお出ましかしら……)
経験豊富なアイシャは、これと似たような経験を思い出していた。
遠い昔に滅んだ王国の王墓で、悪霊と化した国王の霊が現れた時のこと。
周囲の明かりが王を迎え入れるごとく光を灯し、臣下の霊が鎧に宿って整列。王の号令と共に一斉に襲い掛かってきた時のことを。
今回に当てはめるならこのダンジョンの主、または管理者と思われるものが現れる前兆だと考えられる。
そして予想は的中し、このダンジョンの奥から何者かがやってきた。長い長い通路の向こうから、悠然と歩いて。
こつこつと足音を響かせてやってきたのは、クラシカルなメイド服に身を包んだ長身で銀髪の女性だった。
「……あれ?これはまた随分と意外な……っていうか普通に人間じゃない」
「……は、はジ、はジめマシテ、コトバがつたナいことをおユるしくださイ。まだコちらのコトバにナれテないのデス」
「うぉあ!?めっちゃカタコト!!!?」
「ボうえイソウチはワタシがていシさせマシタ。おねがイでスからワタシのハナシきいてほしいデス……どうカいっショにきてくだサイ」
戦いに備えて剣を構えるアイシャだが、女性はそれに動じることなく、拙いながらもアイシャたちが用いるのと同じ言語で話しかけてきた。
彼女が言うにはギア・ゴーレムは彼女の支配下にあり、今はそれを停止させているのだと言う。
俄かには信じがたいことだが、しかし彼女が奥から現れたことを思えば嘘である可能性は低い。
もしかするとこのダンジョンに関する情報を得られるかもしれない。アイシャは大人しくついていくことを決めた。
「おイそぎのトころスみません。シかシワタシも必死なのデス……あとデ帰りかたモおしえマスから……」
「……ん、まあいいわよ。たぶんあんたと話した方が早く帰れそうだし。……というか本当に大丈夫なのよね?いきなり動いたりしないわよねコイツら」
「だいじょぶデス。ワタシここでいちバんえらいデス」
(そのあんたがまず信用できねってのよ……)
片言で話す女性に不安を抱きつつも、一行はこの遺跡のさらに深く。最深の地下50Fへと進んでいく。
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 前押さえ
??? ???/500
2つ名 無敵の堅盾
ひとことコメント
が、がまん……しなきゃ……ぉ……っこ……でちゃだめ……!
そうび
うで きのつえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
たたく かくれる
魔法
ヒール ディフェンス
必殺
ディバインリフレクター
もちもの
HPポーション×6 MPポーション×8
ATK強化薬×2 DEF強化薬×2
おいしい水×1
あれからさらに時間が経ち、胃袋に収まっていたポーションの分解も始まってしまった。
既にかなりの尿意があるのに、これから加速的に高まっていくのは避けられない。
もはや喋る余裕もほとんどなく、我慢に神経を集中させている。果たして町に着くまで耐えられるのか。
飲みすぎ注意な11歳。
_______________
ダンジョン B50F
「ここガこのシせつのいちバんだいじデス」
「ってことはここをブチ壊せば安全になるのね?」
「それハやめテくだサイ」
「ちっ、ダメか……」
「ほんきだったデスか……!?」
「いやさすがに冗談よ。一応」
「……で、話したいことって?わかってると思うけど、あんまりゆっくり話してる余裕はないんだけど……」
「わかてマス。ですガこれだけハさいしょにおねがイしたいデス……」
「どうかワタシに、ここのコトバおしえテほしいデス」
_________
______
___
「発音だのボインだのシインだのはよくわかんないけど、要は基本的な言葉を話せばいいのね?」
「おねがイシマス。文字はだいたイわかてマスが、発音だけわかんないデス」
「で、あんたが知りたい言葉を表示するから私がその発音を……ってわけね」
「そゆコトデス。そのアイダ、ワタシもワタシのことはなしマス」
「りょーかい。あ、それはぼうけんしゃね。私みたいなのをそう呼ぶわ」
「ボウケンシャ……みんなアナタくらい強いデスか?」
「んー?私は特別よ。なにしろA級って世界に5人しかいないのの1人だもん!」
「ナルホド……ではワタシについてお話しまスね」
「ワタシ、この世界と違う世界からきまシタ」
「……へ?」
あまりにも突拍子もない発言に固まってしまうアイシャ。
魔法が存在するこの世界においても、異世界の存在は眉唾と言われていたのだ。
彼女が読む異界と交信して描かれた書物についても、あくまでそういう体裁で描かれたものという認識が一般的で、本当に異界が存在してそこと交信したなどとは誰も信じていなかった。
「これハ1ヶ月くらい前のコトデス。ワタシはワタシのエンジン実験のため出力を最大にしまシタ」
「ワタシのエンジンは超重力を出しマスから、少しは空間が歪ムことありマス。でもフツウはそこまで大きくならないデス」
「デモその日はちがいまシタ。空間の歪みどんどん大きくなっテ、ワタシと施設ごと飲みこみマシタ」
「異空間の中デ、何かの声がきこえマシタ。それに引っ張られテワタシ、ここニきまシタ」
「……それ、ほんとのことなの……?さすがにちょっと信じられないんだけど」
「だかラアナタにききたいデス。この世界ニ、時空をこえテ話できル人いまセンカ?」
「時空を……超えて……異界……」
ここでアイシャはひとつの可能性に思い当たった。
自分がこれまで読んできた書物。もしこれが本当に異界のものであり、彼らがこれに基づいて描いていたのなら。
もしも売り文句などではなく本当に彼らが異界と交信していたのなら、女性とこの「施設」を引きずり込んだ声とは……
「ね、ねえ……あんたの世界にその……鬼〇〇刃とか、る〇〇に剣〇とかって本はある……?」
「でータ照合……ますターの所持する旧世紀こみックにそのようナものがあったとおもいマス」
「……………………」
「どうシまシタ?汗がすごいデスが」
「う、ううん……いやーちょっとわかんないなー、ははは……」
もしもそうだとしたら明らかにこちら側の世界に瑕疵があり、下手をすれば未知の遺跡を探索するどころか、それの正当な保有者を敵に回しかねない。
彼女の発言ひとつで、異界との全面戦争を引き起こしうるのだ。
あのギア・ゴーレムを無数に所持する者との戦いを。
(私でも苦労するような化け物、表に出されたらたまったもんじゃないわよ……!)
「……あ、ひとつ聞いていい?あんた今、自分の……エンジン?って言ったけど……それってなに?聞いたこともない言葉だけど」
「簡単に言えば機械に取り付ける心臓部のようなものですね」
「……へ?」
「ようやく言語パターンの最適化が完了しました。貴女と話をしたお陰ですね、感謝します」
「そして自己紹介が遅れて申し訳ございません。私は日本国にて開発、製造されました生活支援アンドロイド……要するに機械人間です。どうぞよろしくお願いいたします」
またしても突拍子もない発言に固まるアイシャ。無理もない。
まだ蒸気機関すら存在しない技術水準……魔法の存在がゆえ、後回しにされていた科学技術のことなど知る由もない。
ごく簡単な歯車式の機械などはあるが、それと目の前にいる存在が結びつかないのは仕方ないことだった。
「こ、これはどうもご丁寧に……で、アンドロイド?とかよくわかんないんだけど……」
「この世界にもからくり人形の類はあるかと思いますが、アレがもっと人間らしくなったと思っていただければ結構です」
「いや、どう見たってあんた普通に人間じゃ……作り物にはとても見えないけど」
「この世界の技術水準では無理もないことかと思いますが、我々の世界では人間そっくりな機械を造ることも可能なのです」
「見た目には判別不能かと思われますが、実際の私のパワーは貴女が先ほど戦闘を行っていた自律防衛ロボMark.06を片手でひねり壊すくらいです」
「ちょうどこちらに実機がありますので実演いたしますね」
そして彼女は自身が機械であることを証明するため、傍にいた自律防衛ロボ……ことギア・ゴーレムの頭部を鷲掴む。
そして……
「ふっ……!」
しーん……
「……ん?これは……」
「ほーら見なさい!私でも苦労するようなの、あんたみたいな子が片手でひねり壊すなんて無理に決まってるじゃないの!」
「……そうでした、マスターは今いないのでしたね……」
「ほら、無理してかっこつけてないで早いとこ私らを帰しなさい?」
「……そうですね。私がロボであることを証明する行為に意味はありませんし。非常に不愉快ではありますが」
「生活支援アンドロイドとして造られた私はマスターの命令がなければ戦闘モードに移行できず、戦闘モードと通常時とでは出力に数千から数万倍ほどの違いが……」
「ふぁっ……!?ううぅ……!」
「いいから帰り方教えなさいよ!リリカちゃんがヤバいの見りゃわかんでしょうが!」
「承知いたしました。それでは最後に私からのお願いごとをお伝えします」
「もしも異界との交信が可能な人物、あるいは技術を発見することがあれば私に教えていただきたいのです。私にとって、元の世界への帰還は何よりも優先されます」
「ですので度々私の元を訪れ情報をご提供いただければ、提供していただいた情報に応じた返礼を差し上げます。あなた方が欲しがる、我々の技術を」
「なるほどね。情報を教える代わりにお宝をくれるってわけ。まあ悪くはないわね」
「そういうことです。その為の通路もございますので、今後はこちらをお使いください」
アイシャはカードキーを手に入れた!
「これは?」
「この階まで直通のエレベーターのキーでございます。エレベーターとは垂直昇降機……平たく言えば人間の移動手段です」
「おお!これこそまさに私らの欲しかったもの!」
「とはいえ上層階は転移の際の衝撃で復旧待ちとなっておりますので、現時点では行けても20Fくらいまででしょうが……」
「そんでもだいぶ楽になるわ!ありがとね!」
「どういたしまして。それでは今後の情報提供をお待ちしております」
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 前押さえ
??? ???/500
2つ名 無敵の堅盾
ひとことコメント
で……ちゃ、だめ……!ぉしっこ……がまん、しなきゃ……!
そうび
うで 前押さえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
前押さえ 押し付ける
魔法
別のことを考える
必殺
なし
もちもの
HPポーション×6 MPポーション×8
ATK強化薬×2 DEF強化薬×2
おいしい水×1
アイシャとアンドロイドが話し込んでいる間、ずっと尿意に耐え続けていた新人冒険者。
アンドロイドがどうしてやって来たのか、またその抱える技術など冒険者としては気になる話が山積みだがもはやそれどころではない。
魔法を使う集中力も消え去り、ただ尿意に耐えることしかできない。ディバインリフレクターなど以てのほかで、戦闘時にもし彼女を狙われれば大変なことになる。
おもらしだけは嫌な11歳
_________
ダンジョンB20F
「キョアァァァァァア!!!!」
アイシャは天空Vの字斬りを放った!
かいしんの一撃!
サイクロプスに12862ダメージを与えた!
サイクロプスをたおした!
「だ、大丈夫?リリカちゃん」
「ふ……っ、ふぅ……っ!」
(こりゃヤバい……もう声も聞こえてないみたい)
エレベーターに乗り、可能な限りの上階に戻ってきたアイシャたち。
これまでより幾分か状況がマシにはなったものの、それでも依然として危機的なことに変わりはない。
2人はこれから、地下20階から地上まで戻らなくてはならないのだから。
(遺跡系ダンジョンでなければ見張ってるからその辺で、って言えたんだけどなぁ……)
冒険慣れしているアイシャにとって、その辺りで済ませることは当然ながら選択肢の1つに入っている。
しかしそれは外や単なる洞窟のようなダンジョンに限ってのこと。貴重な遺物があるかもしれない遺跡においてはその限りでない。
なにしろそうしたダンジョンでは、隠れた先に大切なものがあるかもしれない。それが排泄物に塗れてしまえば、その価値に影響を与えるのは避けられない。
そのため遺跡系ダンジョンにおいて、排泄はご法度とされているのだ。
もちろん気づかれなければ……という考え方もあるが、ダンジョンのように人の出入りが多いところでは難しいものである。
事実として密告は絶えることがないし、仮にそうした水溜まりなどを見つけたら魔法による解析が行われるような重罪なのだ。
(なんとかがんばって、リリカちゃん……!)
ダンジョンB19F
「キャオラァァッッッッッ!!!!!!!」
アイシャはとびげりを放った!
キラービーに8962のダメージ!
キラービーをたおした!
「まずいわね……虫だの植物だののモンスターが増えてきてる」
「こういうとこには”アイツ”が出るからさっさと行かないと……」
アルラウネがあらわれた!
「……ち、言った傍から……!」
邪神の被造物である魔物たちには常識があまり通用せず、植物魔物が遺跡に出没するようなこともよくある。
どう見ても根を張れないようなところでも、その根をまるで足のように使って動き回る個体は多い。
戦闘力そのものは大したことはないが、毒を持つキラービーやこのアルラウネのように特殊な戦い方で襲ってくるのが厄介な嫌われ者である。
そしてその中のアルラウネは、ある意味この状況に於いて一番厄介な存在と言えた。
(アレをされる前にケリをつける……!)
「とっとと死ねオラァァァァアァ!!!!!!」
アイシャは秘剣カグツチを放った!
アルラウネに8628のダメージ!
アルラウネをたおした!
「よし、なんとかなった……」
特殊な行動を取られる前に一撃で敵を倒し、ほっと一息を吐くアイシャ。
搦手を得意とする相手であっても、それをされる前に倒せば問題はない。彼女の戦闘法に間違いはない。
それが彼女一人だけであったならの話だが。
「ひゃあっ!?」
「っ!?リリカちゃん!!!」
アルラウネがあらわれた!
(まずい、もう一体いた……!?早く倒さないと!)
アルラウネのこうげき!
アルラウネはかふんをまいた!
黄色い粉がリリカにふりかけられる!
「やば……!?この、リリカちゃんを放せオラァァァアアアア!!!!」
アイシャは超必殺属性網羅カラミティソードを放った!
アルラウネに57643のダメージ!
剣がこわれた!
アルラウネをたおした!
「リリカちゃんっ!!」
もう一体背後からアルラウネが現れ、リリカをその蔦で捕らえられてしまう。
これまでと違いリリカが思うように動けないため、戦闘の際アイシャについていくことが難しい。
なので戦闘終了後にはアイシャがリリカから離れていることがあり、そこを突かれてしまった。
それに気づいたアイシャが即座にアルラウネを仕留めるがすでに遅く、その身体には黄色い粉末がたっぷりと振りかけられていた。
この黄色い粉末はアルラウネの花粉であり、アルラウネが好む人間の体液の排出を促すものである。
アルラウネが好むのは若い男性の精液か、若い女性の尿。
アルラウネは捕らえた人間が男性か女性か判断し、それぞれに適したものをその身体に与えるのだ。
男性であれば精力を与える蜜を、女性であれば排尿を促す花粉を。
リリカがたっぷり浴びた粉末は、魔物由来の激烈な利尿薬なのだ。
「アイ……シャ……さ……ごめ、なさぃ……わたし……」
「喋っちゃダメ!息もちょっとだけ止めてて!この粉を払わないと……」
「ふぇ……?…………っあ、ぁ……~~~~~っ!!!」
それを吸わせないよう慌てて払おうとするアイシャだが、折り悪くこの時リリカの尿意に波が訪れる。
高まった尿意がリリカの精神と呼吸を乱し、ひゅっと深く息を吸い込んでしまう。
それと共に吸い込まれる、激烈な利尿花粉。
「…………え?あ、え?あぐ……っっっ!!??」
「あ、あい、あい、しゃ、しゃん……!?これ、おか、しぃれす……!きゅうに、きゅうに、おしっ……!」
「あっ……ぁ、おし……っこ、もれっ……!?ああぁ、がまん、がまん……!」
その効き目はすぐに表れた。吸い込んでから間もなくリリカの様子は一変し、アイシャの見ている前できつくきつく股間を押さえつける。
がくがくと両脚を震わせながらなんとか立ち上がろうとするが……
「ふぁぁぁぁ!!?」
びゅじゅうううぅ!!
「り、リリカちゃん!?無理はしちゃだめ!」
「……ぁ、アぁ……!!」
(こりゃヤバい……)
「ごめんねリリカちゃん!」
立ち上がろうと脚に力を入れることさえもはや叶わず、滑らかな床にびちゃびちゃと水流を撒き散らしてしまう。誰が見ても明らかな「失敗」の跡。
もはや一刻の猶予もない。アイシャは意を決してその背中にリリカをおぶさった。
傷んだ剣が壊れ、さらに両手が塞がった状態でひたすら地上を目指す。もはや敵と戦うことなどできず、逃げ回るしかない。そうでもしないと絶対に間に合わないから。
2人の最後の戦いがここに幕を開けた。
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 もれそう 利尿
??? ????/500
2つ名 無敵の堅盾
ひとことコメント
ぉしっこ……でちゃぅ……!
そうび
うで まえおさえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
前押さえ 押し付ける
魔法
別のことを考える
必殺
???
もちもの
HPポーション×6 MPポーション×8
ATK強化薬×2 DEF強化薬×2
おいしい水×1
アルラウネの利尿花粉により、これまで飲んできた大量のポーションの分解が大幅に早まってしまった。
もはや一秒を争う尿意を前に、彼女一人だけではどうしようもなくなってしまう。
アイシャの背中におぶさり地上を目指す。ぐしょぐしょの下着を頼れるおねえさんの背中に押し付けなければ我慢ができない少女の胸中はいかに。
あるいはそのようなことを考えていられる余裕もないのかもしれない。
最悪の事態だけはなんとしても避けたい11歳。
_____________
ダンジョン B11F
きゅうけつバットがあらわれた!
「どけぇオラァァァァアァアアアァァア!!!!!」
アイシャはにげだした!
薄暗いダンジョン内を、明かりも持たずに爆走する一人の女性。
背中に幼い少女を背負い、無数の魔物をかき分けて出口へ突き進むA級冒険者。
銀麗と称される太刀筋を封じ、ただその脚力のみを以てダンジョンを逆走する。
それはただひとつの目的がために。
(待っててね、リリカちゃん……!)
半分ほど自分のせいで追い詰められてしまった幼い冒険者。その名誉のために。
飲みすぎてしまったポーション、アルラウネの利尿花粉によって苦しむ少女のために。
なんとしてでも間に合わせる。たったひとつそれだけのため彼女は走る。
ダンジョン B10F
「はぁっ、はぁっ……なんのこれしきィィィイィイィイイ!!!!!」
だがそれでも。いかに彼女がA級と呼ばれ、人間離れした身体能力を持っていようと、それでもこれまでほとんど休みなく戦い続けてきたツケは大きい。
誰も踏破したことのないダンジョンを最後まで戦い抜き、異界技術の結晶にも打ち勝ったその後で人間一人を背負ってここまで全速力で走り続けてきたのだ。
並の冒険者ならここまで持たず、途中で力尽きていただろう。
それでも彼女は走り続ける。背中に背負う少女のために。
ダンジョン B9F
「うぐうぅっ……!!?」
背中のリリカが小さなうめき声を上げると共に、背中で弾ける温かな感触。
ぐりぐりと押し付けられる少女の柔らかな排泄孔から噴き出す、熱い熱い我慢の雫。
少女の我慢がもう幾ばくもないことを示す、先走りの雫。
「ご、ごめんね!いっぱい揺れて、つらいよね!ごめんね!もうちょっとだから……!」
首筋に当たる熱を持った吐息が、濡れて張り付く衣服の感触が、少女の切迫ぶりを顕著に表している。
些細な振動すら相当な苦痛をもたらすだろう激烈な尿意。幼い身体にはとてもつらいだろうその苦痛は同じ女性として察するに余りある。
アイシャなりにベストを尽くしていても、それでも耐えがたい尿意に今リリカは晒されているのだ。
残るフロアはあと9階。2人の戦いは最終局面を迎えていた。
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 もれそう 利尿
??? ????/500
2つ名 無敵の堅盾
ひとことコメント
……っ、もれ……ちゃう……よお……っ!
そうび
うで まえおさえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
前押さえ 押し付ける
魔法
別のことを考える
必殺
???
もちもの
HPポーション×6 MPポーション×8
ATK強化薬×2 DEF強化薬×2
おいしい水×1
飲んできたポーションのほとんどが膀胱に降りてきて、いまや普通の限界量の4倍近い壮絶な尿意に晒される新人冒険者。
括約筋はとうに限界を越しており、ひとたび出口を塞ぐ指を取り払ったならたちどころに始まってしまうのは避けられない。
もうおしっこのことしか考えられない11歳。
_____________
ダンジョン B1F
「…………っこ……ぉし……っこ……でないで……まだだめ……っ!」
「ぁ……ぅ……おしっこ……おしっこ……」
背負っているがゆえ、耳元で囁かれるような形となるリリカのひとりごと。
切迫する尿意がそのままあふれ出るかのように連呼される恥ずかしい言葉。普段なら絶対に人前では口にしないようなことでも、もうそれを気にすることさえできないのだ。
「もうちょっと、もうちょっとだからね、リリカちゃん!」
それは嫌が応にもアイシャを急かしてしまうが、それでも出口はもう目前である。
ダンジョンを出てさえしまえば、冒険者向けのキャンプは目と鼻の先。トイレもそこにある。あとすこしなのだ。
スライムのむれがあらわれた!
「どけっつってんでしょうがァァァァァァアアアァァア!!!!!」
アイシャはスライムAをふみだいにした!
スライムAに42395のダメージ!
スライムAをたおした!
アイシャはにげだした!
そんな2人の行く道を塞ぐように現れたスライムをアイシャは走る勢いそのまま足蹴にし、ゼラチン質のその身体を踏みつけて出口まで跳躍していった。
地上に出た2人を迎える暖かな太陽の光。もう邪魔するものは何もない。
アイシャはその勢いのまま、冒険者キャンプに突き進んでいく。
「トイレ、借りるわよ!!!!」
多くの冒険者たちが旅の支度や酒盛りをしている横。離れのテントに設けられた汲み取りトイレ。
もう障害はなにもない。アイシャがリリカを背中から下ろすと、彼女はトイレに向かって一目散に駆けだした。
「ぉ、おしっこ……!おしっこぉっ……!!!」
人目もはばからず股間を押さえつけ、くねくねと腰を揺すりながらリリカはトイレのテントに入っていった。
ようやくたどり着いたトイレの中で、リリカは濡れたローブの裾を勢いよくまくり上げた。
「ふぁぁぁぁっ……!!?」
ぶしゅじゅじゅううっ!!!
もう限界をとうに通り越した尿意は、下着を脱ぎもしないうちから迸る。瑞々しい太股にいくつも小便の筋を伸ばしながら、リリカは必死に最後の一枚を脱ごうとするがうまくいかない。
濡れて張り付くそれの抵抗が、あわてふためき震える指先が、少女の目的達成を阻む。
びゅじゅじゅじゅっっ!!!!びじゅいぃっ!!
しかし尿意は彼女が下着を脱ぐのを待ってはくれず、次から次にあふれ出る。
とうとうリリカは脱ぐことを諦め、ローブをまくってしゃがみ込んだ。
露になる白い丸尻。断続的に尿を噴き出す噴射口がいま、下着をずらして剥きだされる。
もう遠慮することはない。排泄孔と共に全開になる尿意を、今。
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 噴射直前
??? ????/500
2つ名 無敵の堅盾
ひとことコメント
………………っっっ!!!!
そうび
うで まえおさえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
前押さえ 押し付ける
魔法
別のことを考える
必殺
???
________________
ぶっっっっしゅううううううぅうぅぅうぅぅぅぅぅぅうううううううーーーーーーー!!!!!!!!!
「ふぁ……!あ、はあ……っ!?」
乙女の放水栓を全開にした瞬間、リリカの視界にいくつもの火花が散る。
限界の限界を超えて耐え続けた果ての、つらい我慢に代わって訪れる至福の時。
我慢に疲れた尿穴を抉るごとく駆け抜けていく極太の尿線。その振動が、お腹の重荷のなくなる感覚が至上の快感となって少女を頂点に押し上げていく。
大きなため息と共に我慢を重ねたおしっこを解き放つ。身体中の力が抜けていく夢見心地の中で、少女は疲れた心と身体を浸らせるのだ。
しゅううううぅぅぅうううーーーーー!!!!しゅいっ、しゅいぃっ!
だが長い長い我慢に対してそれを放出する時間はあまりにも短く。
それでも一般的な普通のそれよりずっと長いが、しかし勢いも相まって放出は3分経たずに勢いを弱めていく。
やや名残惜しさを感じながらも、リリカは最後の一滴までをも絞り尽くした。
(……!わたし、おしっこを……きもち……いいって……こんなの……!)
(き、きのせい……ですよね……こんなの、変態さんみたい……)
「ぁう、ぐしょぐしょ……替えもないし、どうしたら……」
事を終えれば、あとは自身の現状が突き刺さるのみ。
これまでの先走りで台無しになった下着、ローブ、ブーツ。
誰から見ても明らかな失敗の跡を残すそれらをそのまま、外に出なくてはならない。
恥ずかしさに顔から火が出てしまいそうだが、だからといってこのままずっとここにいるわけにもいかない。
意を決して、リリカはテントから外に出ていった。
すると……
『うおおおおおおおお!!!!』
「ひゃぃ!!!?」
なんとテントの外には酔っぱらった男たちがずらりと並んでおり……
そしてそれらと真っ向からぶつかり合うアイシャの姿があった。
人間離れした身体能力であり、その辺の男なら容易く取り押さえられる彼女だが、しかし数が多すぎればその限りではない。
リリカが入っていたテントを囲う男たちは軽く見ても30人ほどいる。全員を斬り殺していいのならともかく、そうでないとなると逆にやりづらい。
そしてアイシャの制止を無視した男たちは口々に囃し立てる。
『すっげえ音がしたから誰かと思ったら、こんな可愛い嬢ちゃんかい!人は見た目によらねえなあ!』
『離れたとこで飲んでる俺らんとこまで聞こえてきたからなあ!こりゃあこのキャンプの最高記録じゃねえのかい?』
『いやいや大した嬢ちゃんだ!よく我慢したなあ!』
「あんたらいい加減にしなさいよ!!!剣のサビになりたいの!?」
「………………ふぇ?」
そう。リリカがテント内で噴射した我慢限界の放尿。その爆音は布でできたテントの防音性能など容易く貫通し……離れたところで騒ぐ男たちの下へも届いていたのだ。
酒飲みの男たちにとって、放尿の音と量は一種のステータス。どんな豪傑が入っているかと思って見に来てみれば出てきたのは可憐な少女。
大量の酒を飲んだ豪傑に勝るとも劣らない爆尿を放つ少女。そんなものを見ればはしゃがないはずもなく。
「うそ……ぜんぶ……きかれて……?」
『すごかったぞ嬢ちゃん!でもダンジョンに入るんならポーションの飲みすぎには気を付けるんだぞ!』
「あ、あう、あう、あ、あう……!!!!?!?」
ばたん……
「り、リリカちゃんーーーー!!!!?」
そして恥ずかしさが臨界を超えたリリカは自己防衛のため気を失うのだった。
リリカステータス
HP 52/52
MP 5/105
状態 きぜつ
2つ名 無敵の堅盾 最強ションベン娘
ひとことコメント
………………(気絶中)
そうび
うで きのつえ
うで ブレスレット(やすもの)
からだ しょしんしゃのローブ
あし しょしんしゃブーツ
あたま くろいフード
スキル
たたく かくれる
魔法
ヒール ディフェンス
必殺
ディバインリフレクター
もちもの
HPポーション×6 MPポーション×8
ATK強化薬×2 DEF強化薬×2
おいしい水×1
冒険者ギルドのキャンプにて、非常に不本意な理由で目立ってしまうこととなった新人冒険者。
図らずも2つ名(?)を獲得。彼女はこれからどうなっていくのだろうか。
冒険はまだまだこれからな11歳。
________________
「す、すみません……ご迷惑ばかりおかけして……」
「迷惑なんてかかってないよ。大丈夫大丈夫!」
それからしばらくして、アイシャと意識を取り戻したリリカはダンジョンを離れて街を訪れていた。
その理由は言わずもがな。ダンジョンで手に入れた宝の鑑定、および戦闘経験の反映である。
「私がお宝を手に入れたのだって、一人じゃ無理だったもん。だからお互い様だよ!」
「そ、そう言ってもらえると嬉しいです……!」
「それよりリリカちゃん、一気にレベル10まで上がったんだって!?すごいじゃん!」
「は、はい……私、なんにもしてないですけど……なぜか……」
「いやいや、なんにもしてないってことはないと思うよ。リリカちゃんだってレベルアップのことは知ってるでしょ?」
「はい……邪神の被造物である魔物を倒したり、その撃破に貢献することは人が神に捧げる『徳』の積み重ねであると……」
「そ。だから冒険の後には教会に行って旅の記憶を神様に捧げて、その経験に応じた神様の加護を貰うの。んでそれが一定を超えたらレベルが上がって、身体が強くなったりいろいろするわけよね」
「大事なのはレベルを上げるかどうか決めるのは神様だってこと。神様から見たってリリカちゃんは大活躍だったからたくさんレベルを上げてくれたんじゃないかな」
「そ、そう……なんでしょうか……」
「そうに決まってるよ!だってリリカちゃんがいなかったら私、死んでたんだから!」
「あ、ありがとう……ございます……!うれしいです……!」
「ま、逆に私はレベル上がんなかったけどねー。元が高いからってのもあるだろうけど」
「アイシャさん、60超えてましたものね……学校の先生だって40とかがほとんどなんですけど」
「そりゃーあなた、世界に5人しかいないA級冒険者ですからね!んふー!」
レベル。それはこの世界における人間の能力を定める重要な概念である。
神によって生み出された存在である人間は、その加護を与えられることで強くなる。そしてその加護は、より強い魔物をより多く倒したものにより多く与えられるのだ。
それは冒険の後、教会に行って神前で旅の記憶を捧げることによって判定される。そこに嘘はあり得ず、戦闘における功績に見合った加護が与えられるのだ。
そして体内の加護が一定を超えた時、身体能力の向上や魔力の上昇、またこれまで使うことのできなかった高位魔法の習得などの恩恵が与えられる。
その上がりやすさなどはそれぞれの適性や才能によって上下するが、基本的に強くなろうと思ったらレベルを上げるのが一番の近道となる。
筋力トレーニングなどは、その土台となるものだと言える。
「A級魔物をあれだけ倒してもレベルに影響がないなんて、やっぱりすごいなあ……」
「まあまったく無いってワケじゃないんだけど、レベル上がるほどにはなんなかったみたいねー……ギア・ゴーレムは魔物じゃないから計算外だし」
「あはは、さすがアイシャさん……」
「さて、まあそんなわけだから……当分はダンジョン巡ってお宝探しでもしつつレベル上げようと思うわ。調べたいこともあるしね」
「は、はい。応援してます……!」
「……え?こないの?」
「…………ふぇ?」
「私、リリカちゃんと一緒に行く気でいたんだけど」
「ふええええぇぇぇ!?」
あまりに突拍子もない発言に驚くリリカ。
それも無理はなく、あまりにも強さがかけ離れすぎている。
自分が一緒にいても脚を引っ張るのではないか、そう思ってしまうのも仕方がない。
「いやーだってホラ、リリカちゃんの守りの堅さは本物じゃない?私としてはすっごく防御が上手い相方がいたら助かること多いと思うのよ。さっきのギア・ゴーレムみたく」
「いやいやいや!?私より堅い人もっといると思いますよぉ!」
「いやいや、何秒かの間だけなら世界一堅いじゃん?リリカちゃん。これってもう才能だと思うのよ」
「さ、才能……」
しかしアイシャの言うことも間違っているわけではない。
攻撃力は最高峰。回避力も高いがたったひとつ、打たれ強さだけはそれほどでもないアイシャにとってそこを補う相棒の存在はとても心強いものだった。
今回の冒険でもあったように、狭い場所での戦闘など回避が役に立たない場合はどうしてもある。そうした場合にリリカがいてくれたら心強いのは間違いない。
「ね?おねがい、私を助けると思って!」
「あ、あうぅ……!」
そしてアイシャの必死のお願いは、やがてリリカの心にも届き……
「わ、わかり……ました……っ!脚を引っ張らないよう、がんばりますっ……!」
最高峰の攻撃力を持つアイシャと、数秒だけ無敵の防御魔法を持つリリカ。
世界最強のA級と新人冒険者の凸凹コンビが、ここに結成された。